いつもより多く回しております

ファミリー

 「2万9千円」「3万6千円」「4万9千円」「口座への振込みも合わせると6万円ちょっとかな」景気のいい数字が飛び交っている。オークションかそれとも振り込み詐欺か…いやいや年始めに調べているお年玉アンケートに答えてくれた子どもたちの口から発せられたお言葉なのである。

 新年、小学生クラスの最初の活動はみんなでお正月遊びや福引などを楽しむことにしている。その冒頭で子どもたちにどのくらいお年玉をもらったかを毎年聞いているのだ。ずいぶんと昔には10万円以上ももらっている子どもがいてビックリしたこともあった。さすがに今年は世の中全般に不景気風が吹いているから減少傾向なのかとも思っていたら、ある調査によると今年小学生がもらったお年玉の平均金額は25,304円で、昨年よりも1,178円も増加しているのだという。(川崎信用金庫調べ) 何かと不景気風の吹く世の中にあってお年玉はマイナスシーリングにかからない『聖域』のようである。

 次に気になるのはお年玉の使い道なのだけれど、これはほとんどの子どもたちが貯金と答えていた。中には「お母さんに預けた」という危険極まりない(?)保管方法を選択した子どももいて、思わず「ちゃんと一筆書いてもらったか」と心配の余り忠告してしまったのであった。

 確かに子どもの金銭感覚ではいきなり福沢諭吉さんをもらっても、何に使っていいかわからないだろう。男の子に「何か欲しいもんとか、買いたいもんとかないの?」と聞いても「ゲームソフト」くらいが関の山、衣食住に足りているわけだから物欲ってのはあまりないのかも知れない。「ぱぁ~っといこう!」といったところで、お酒を飲むわけじゃないし好きなおやつだって500円玉ひとつあれば足りてしまうだろう。使い道がないから結局は金融機関に預けられ、金融機関は貸し渋って世の中にはお金は回らない。これじゃ景気はしぼむ一方だ。

 ところで今年は平成生まれが初めて成人式を迎えた年となったが、この世代が生まれたときにはすでにバブルははじけており、その後にわき起こったITや不動産などの泡も消え、経済の縮小とともに育ってきたためほかの世代に比べて貯蓄に熱心なのだという。確かにお国の福祉政策では生きるのも危うそうではあるが、ならば今の子どもたちはもっと貯蓄に励まなければならないのだろうか。

 景気とは最後は「気」の問題なのだという。今の金融危機に気合いで対抗できるとは思わないけれど、みんなが少しでも気を大きく持って消費すれば気も上向きになるのかも知れない。お正月だもの、今は亡き染太郎師匠がいってたように「いつもより多く回して」景気よくいきたいものですね。

 というわけで懐の温かい子どもたち、お年玉の使い道に困った時はいつでも相談に来なさい。世のため人のためにお金を使うことにいっしょに協力してあげるから!

(2009/02月号)

蛇足
 先日、日経平均株価がバブル期の最高値を更新(3万9098円68銭)したうんぬんという報道があったが、世の中実に静かで浮かれている様子のかけらもない。この文章を書いた2009年の前年にはリーマンショックがあって、12,000円台だった日経平均株価は6,994円まで暴落したので、それから25年もかかったらしいがはたしてこの先はどうなることやら…ところで今の子どもたちってお年玉もキャッシュレス決済なんですか?

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