や~や~我こそは!

こどもって面白い

 「うおぉぉぉぉ~っ!」「どりぁぁぁ~っ!」「うわぁぁぁぁ~っ!」工房の裏山にこどもたちの雄叫びがこだまする。「来たぞぉぉぉ~っ!」「あっちやぁぁぁ~っ!」どどどどぉぉっと工房に裏のドアが開くや、木で作った剣を振りかざした一団が現れ、工房を突っ切って表のドアからまた消えていった。旗を持っている者や段ボールのカブトをかぶっている者、どこから見つけたのか破れた着物(これが長じゅばんだったりする…)を着ている者もいたりするが、戦いのこの期に及んでもこの武士たちは実ににこにことうれしそうに笑っているのだった。

 最近、発明クラブの男の子たちは「戦国系」の遊びに夢中なのだ。戦いごっこに使う木の剣作りから始まって、家紋や旗じるし、カブト、お城と興味はどんどんと広がっている。きっとそのうちに城を作りたいとか、刀鍛冶になりたいとかいい出しそうな勢いである。しかも彼らの歴史に対する造詣の深さはなかなかのもので、答えに困る質問の多いこと。世界史Bでの受験のため、日本史を軽視してしまった報いを感じる日々なのである。

 それにしても男の子たちの「戦国系」へのあこがれは、いつの時代もそしてどんな世代にも共通するもののようだ。最近は「歴女」とよばれる歴史好きの女子の方々も話題に上るが、男子とは興味の方向が違うのだともいう。曰く、男子は戦国武将などの人となりや人心掌握力、策略や戦術などに興味があるのに対し、女子の方々は歴史上の人物の愛やロマンにひかれるのだともいう。そういえばいわゆるビジネス雑誌ってやつには、定期的にいやもしくはネタが切れると「歴史上の人物に見る組織のまとめ方」とか「武将に学ぶ部下の育て方」なんていう表題がついているわなぁ。

 でも、小学校の男子が武将を好きなのは、「球技大会における戦略」とか「登校班のまとめ方」とかにその轍を生かそうとしているわけではなく、単純にかっこいいからに違いない。たぶん織田信長と仮面ライダーWは同じくらいこどもたちにとってはヒーローなのだ。しかしこの歴史上の人物から入って歴史を勉強するというのが、きっと一番いい勉強の仕方に違いない。だっていくら史実や年表の数字を覚えても、そこに人のにおいや生活が感じられなければ、きっと試験が終わったらすぐに忘れてしまうだろう。イマジネーションをふくらませて、時代を越えた人々にも共感できるってことがやっぱり大切なのだ。

 ちなみに発明クラブの武士たちは、自分たちだけでの戦いごっこだけでは物足らず、ついには冒険クラブとのチャンバラごっこにまで発展したのだが、普段から野山を駆け回っている冒険のこどもとに比べると体力が劣っていると判断したのか、真っ向からの勝負を避けていかにやりこめるかというセコイ戦略ばかりを練っているのだった。まぁ確かにいつの時代も奇襲や騙しのような戦略で勝った者が新しい歴史を作っていたりするけれど、せめてこどもの頃くらいは正々堂々と勝負してもらいたいもんだ。小さい時から「人生勝てば官軍」じゃさみしすぎるぜ!!

(2010/04月号)

蛇足
 ベネッセが調べた小学生の好きな武将ランキングでは、織田信長が堂々の一位とのこと。天下統一を目前に亡くなったという悲運のヒーローというイメージがその人気の理由なのだとか。でもこの調査の元データは、『コミック版 日本の歴史』(ポプラ社)売上げランキングによるものなので、本当に子どもが好きなのか、子どもに読ませたい親御さんが買ったのかはよくわかりません。悲運とか悲劇とかいかにも日本人の好きそうなお話ですものね。
 1位 織田信長    6位 柴田勝家
 2位 伊達政宗    7位 武田信玄
 3位 徳川家康    8位 明智光秀
 4位 真田幸村    9位 上杉謙信
 5位 豊臣秀吉    10位 井伊直政 

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