春とともにいよいよ今年度のプレイスクールも始まった。今日から幼児クラスが始まるこどもに「今日、待ってるよ」と声をかけたら、その子はちょっと困ったようなうれしそうな顔をして「今日はプレイスクールいかれへんねん」というのだった。「ふ~ん、そうなんや。どっかいくの?」「うん、今日はな忙しいねん!」幼児さんに忙しいなどといわれると、いったい何が忙しいのか聞いてみたくなるではないか。「そうかぁたいへんやね。忙しいねんや」「そやねん、みんなで公園行ったりとかな。教室の金魚にエサやったりとかな…いろいろ忙しいねん!」「そうかぁ、そら忙しいなぁ! ほなまた今度待ってるで」それはご多忙なことである。プレイスクールで遊んでいる場合ではない。
ところでこの不景気をなんとかするべく、お国からお小遣い(?)がもらえるのだという。なので公園で遊んでいる場合ではなく、ショッピングモールで買い物するとか映画を観るとかお金を使って景気のためにはプラスになる行動をとらなければなりません。すでに来年のランドセル商戦も始まっているので、ワンランク上のものを買ってもらいましょう。だってこのお小遣い2万円はキミの分ですから、間違っても貯金に回されてしまうことのないように気をつけましょう。
さる調査によると、この定額給付金の「プチぜいたく」な使い道は家族みんなでの外食がトップで、何を食べるのかといえばダントツ「焼肉」なのだそうだ。せっかくなのだから、この際アメリカ産とかオーストラリア産とかではなく和牛A5ランクとかでドカンといっといてもらいたいものです。ましてや安いからといってトントロで満足などしてはいけません!
それにしてもいつの間にか町中のあちこちが焼肉屋だらけになっているではないか。狂牛病で大騒ぎしたのはつい最近だったような気がするが、熱しやすく冷めやすい、何でも騒いですぐに忘れるのはわれわれの得意技なのだろうか。これじゃ転んで泣いて、痛いの痛いの飛んでけで笑顔に戻る幼児と大差あるまい。焼肉屋の隆盛は日本人の食文化がそれだけ変化し欧米化してきたということなのだろう。確かにこどもたちにいま一番食べたいものアンケートをすると、ステーキとか焼肉とかがトップになるものね。
食文化の欧米化は、日本人の体にも変化をもたらした。厚生労働省が行った高校生を対象とした調査では、何と4割が生活習慣病予備軍なのだという(ただしこの調査は成人よりは基準が厳しい)。また小学生の10人にひとりは肥満という話もあるし、メタボな傾向は若年化しているようだ。でも大人の肥満とは違って、こどもの場合は食事内容と運動で比較的はやく改善されるともいう。
高校生の調査でおもしろかったのが、「テレビを長時間観ているこどもの方により予備軍的傾向がみられる」というもので、それって運動とか体を使って遊んでなくて、ただじっとしている時間が長い子の方がその傾向にあるってことで、何となくうだうだとテレビを眺めていただけじゃないのだろうか。何かいいかたによってはテレビが悪いみたいに思えたりするが、やっぱりどこかに原因を見つけて悪者を作って納得したいだけ、いわゆる溜飲を下げるってやつなんじゃないだろうか。
ところで最新のテレビは、観ている人がいないとテレビが勝手にスイッチをオフにするらしい。これじゃ人とテレビとどっちが見ているのかわからない。電気代の節約になるからエコなのだというが、それなら主電源を切る方がよっぽどエコではないか。世の中のエコブームも、そのうちに狂牛病のときにようにまたすぐに次の流行り言葉に替わるのだろう。ならばこの際、テレビの前でポテトチップスやお菓子を食べていたら画面に「ただいまの摂取カロリーは○○kcal!食べすぎです!食べすぎです!」なんていう警告をしてくれるテレビでも作ったら、みんな定額給付金で買ってくれるかもね!
家電メーカーみなさま、どうです。エコの次はメタボで攻めたら!
(2009/05月号)
蛇足
「定額給付金」は、2008年のリーマン・ショック後の経済政策としてひとり1万2千円(18歳未満と65歳以上は2万円)が給付されましたが、その経済効果はかなりあやしかったようです。記憶に新しい新型コロナ対策として2020年に配られた特別定額給付金(ひとり10万円)に比べるとじみでしたものね。しかし、どちらも何に使ったのかよくわからないうちに泡と消えておりました。
狂牛病問題は、2000年代初頭にBSE問題(牛海綿状脳症)として騒がれた。この病気に感染した牛の肉を食べると人間にも感染るとマスコミが騒ぎ社会全体がパニックとなり、牛丼屋が豚丼屋さんになったりしました。ところで最近はやたらと焼き鳥屋さんとか鶏唐揚屋さんとかが増えているのは、安いものが正しいという消費行動が原因なのでしょうか?