新緑が映える季節になった。プレイスクールの周りの森も日に日に緑が色濃くなってきて目を楽しませてくれているが、それは同時に賽の河原の石積みのような草刈りシーズンの到来の合図でもある…はぁ~っ!!
ボクが子どもの頃、ある先生から近視にならないようにたまには窓の外の緑の山を見るといいと教えてもらったことがある。それ以来、黒板よりも窓の外を眺めることの方が多くなり、おかげさまで視力は維持したものの成績はといえば直視できない状態となってしまった。しかし、都会の学校では窓から緑の山すら望めないだろうし、目に効くツボを教えるくらいしかないのだろうか。
その頃も子どもたちの視力の敵としてテレビがやり玉に挙がっていたし、同時に番組内容についてもさまざまな意見があった。テレビというメディアそのものがまだ目新しかったこともあって、時には「電気紙芝居」などと呼ばれテレビが流行ると「一億総白痴」になるなんていう人もいたりした。新しいものに対してはいつもネガティブな意見が出てくるのが世の常なのだろう。
さて、今年(2007年)も日本PTA全国協議会が「親が子どもに見せたくない番組」を発表した。堂々1位のロンドンハーツはめでたく4年連続の栄冠なのだそうだ。たいていこの席はお下品なバラエティー番組の定位置で、いまの親が子どもだった頃には「8時だよ!全員集合」や「オレたちひょうきん族」があったし、もっと前ならコント55号が野球拳までしていたものだ。今ほど放送倫理や規制などがうるさくなかった分、きっと昔の方がエグかったような気がする。
全体的に親は子どもたちに「役に立つ」「知識が豊富になる」といった理由で見せたい番組を選んでいるのに反して、子どもは単純に「面白い」「友だちと共通の話題になる」などといった基準で選んでいる。きっと大人はテレビを何らかの情報を得るためのツールとして見ているのに対し、子どもは「楽しければいいじゃん」という程度にしか見ていないということなのだろう。だいたいテレビを見て知識を獲得しなければならないのなら勉強しているのと変わらなくなってしまうではないか。子どもの中には「ストレス発散」という理由で番組を選んでいる子もいるくらいだから。
見せたくない番組と子どもの好きな番組の両方に顔を出している番組には親子の意識の違いが見られる。親子で意見の分かれた「14才の母」(2006年)のテーマは、かの「金八先生」でも取り上げられた命という大切なテーマにも関わらず、親の方が問題を直視できないでいるということなのかも知れない。テーマの重さは重々承知していても、それをどう伝えるかに戸惑う姿が見えてくる。ならばこれは意識の違いというよりは立場の違いに過ぎないかも知れない。いつの時代にも「このテーマは小さい子どもたちには刺激が強すぎますわ!」とか「まぁ、こんなお下品な番組を放送するなんて…!!」という役割の大人がいるということだろう。しかしテレビなど所詮はチャンネル数も知れているが、いまやインターネットの時代、この膨大な情報を誰がいかにしてチェックするのだろう。
それにしても今回も「志村けんのバカ殿様」がランクインしているというのはスゴイことだ。うちのリーダーが、昔これを見ていておじいちゃんに怒られたといっていたくらいだから、ひょっとしたら全世代の親に嫌がられているのかも知れず、もうそうなったら逆の意味で国民的番組ということになるだろう。頑張れ!志村けん!アイィィ~ン!
(2007/06月号)
蛇足
ちなみにこの調査は2012年をもって終了したとのことです。「ロンドンハーツ」は実に9年連続ナンバーワンでしたが、この調査データは少し注意深くみる必要がありそうです。2010年の調査では、回答された調査母数3,715名の中で「見せたくない番組がある」と答えた人は863人、つまり全体の23.2%。そしてこの中の143人がロンドンハーツをあげていました。つまり母数からみると3.8%! えっ!たった3.8%で堂々のランキング1位に輝けるなんて! 数字のマジックですね!
志村けんの番組は、「バカ殿様」が見せたくない番組第4位(58人/ 1.6%)、同時に「天才!志村どうぶつ園」は見せたい番組のこれまた4位(82人/ 2.2%)でした。何かにつけ影響力の強かった志村けんさんは、2020年に新型コロナで亡くなられた時にも社会全体が一気に新型ウイルスへの緊張感に包まれました。合掌