ちょっと解説…
2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は60億キロにも及ぶ宇宙の旅を経て、2010年に地球に戻ってきました。南オーストラリアで小惑星イトカワから採取した試料の入ったカプセルを分離したのち、はやぶさ本体は大気中で流れ星のように燃え尽きたのでした。当時、さまざまな難題を解決しながら地球に戻ってきたはやぶさの姿は、多くの人々に感動を与えたました。
一方、「なぜ1位なんでしょうか?2位じゃダメなんですか」は、2009年当時の民主党政権が予算の無駄を洗い出す「事業仕分け」の会議の中で、世界一を目指すスーパーコンピューター「京」開発についての蓮舫議員の発言。事業凍結の方針はその後、多くの国民、知識人の反対意見に撤回され、11年に計算速度世界一を達成しました。その後開発された「富嶽」は2022年まで6期連続で世界トップとなっています。
ある日、男の子のカバンから何かが飛び出しているので「何なん、それ?」と聞いたみた。するとその子は「なわとびやねん! 二重とび10回できるようになってん! なぁなぁ見て、見て!」とカバンからなわとびを取り出すや、ボクの腕をつかんで半ば強引にグランドに連れ出し、目の前でなわとびを始めるのだった。
「見ててな! い~ち、に~ぃ、さ~ん…」「おっ! スゴイやんか!」「よ~ん、ごぉ…あれっ? もう一回するし、見ててな!」何度も二重とびに挑戦する男の子は、はぁはぁと息もあがり額には汗を浮かべてなわとびを回し続け、その横でボクは「すごいっ!」「もうちょっと!」「おしいっ!」と合いの手を入れ続けるのだった。
それにしても、子どもの「見ててな攻撃」はいろいろなパターンで展開される。サッカーボールでゴールを狙ったり、工房で作ったおもちゃを自慢げに見せてくれたり、友だちとバドミントンをするのを見ててというのもあったりする。子どもたちは日々いろんなことにチャレンジして、いろいろなことができるようになっていく。毎日いろんなことができるようになるのだから、そりゃ人生楽しいに違いない。ボクのようにこの間まで見えていたものがかすれ、この間までできていたことがうまくいかなくなるのとはまったく逆ベクトルの世界に住んでいるのだから、楽しいに決まっている。そして、できるようになったことを人に自慢し認めてもらうことで自信を深めて、また次のチャレンジにつながっていく。だから「見ててな攻撃」を受けた時には、最大の賛辞を贈ることが大人として正しい対処の方法なのである。
ところで先日、小惑星探査衛星「はやぶさ」が無事地球に帰還した。燃料漏れやエンジン不調や、通信不能など幾多の困難を乗り越えて、約3億kmも離れた小惑星イトカワに着陸、サンプルを採取して再び地球に戻ってたのだ。ボロボロになりながら7年もかかって戻って来るなんて、機械であろうが「健気」といって誉めてやりたいではないか。しかも技術的には世界初、つまりは世界一のこともいくつも成功しつつ、このタイミングでうまく帰ってこれたのは、ひょっとすると日本じゅうの科学者の怨念にも似た祈りが、壊れたエンジンの代わりをしていたのでないかと思ったりもするのだ。燃え尽きながら地球に突入する姿は、はやぶさが「見ててな」といっているようだった。誰に対する「見ててな攻撃」かって? そりゃ「一番でなきゃダメですか」のあの人にである。
なわとび少年が休憩している時に聞いてみた。「二重とびできるんやったら、はやぶさもできるん?」「う~ん、あやとびがうまいこといかへんねん…」「そっかぁ、でもすぐにできるようになるで」「うん、そやな!」大丈夫、キミならすぐにはやぶさはできる。ひょっとすると宇宙にまで飛んでいけるようになるかも知れないよ!
(2010/07月号)