世の中、検定ブームなんだそうな。それに乗じてすごい商売をしてしまった協会もあったりして新聞沙汰になっていたりする今日この頃、同じ京都にある、同じ財団法人で同じくなんちゃら協会という文字の並びまで一緒なのに、うちとの違いに愕然キョーゼンなのである。
そこで世の中にはどんな検定があるのかを調べてみると、出てくる出てくるユニーク極まりない検定の数々。京都・観光文化検定などのご当地検定は数知れず、お勉強系だと国語力に漢字に美術に音楽、理科学、歴史能力、食べ物系だと家庭料理技能に雑穀エキスパート、バーベキューに泡盛マイスターにきき酒、コーヒー、果てはアニメにウルトラ、競馬に花火鑑賞士、そしてわれらが阪神タイガースまでとにかく世の中のすべてのものに検定という文字をつければいいって感じなのだ。
そんな中こんなのを見つけました。『子育てパパ力検定-パパ検』! 曰く「父親の育児への関心やパートナーとの関係、自身の働き方の見直し、あるいはこどもを取り巻く社会環境への問題意識などを喚起することを目的とした検定」なのだそうだ。練習問題があったのでしてみたけれど、画数の多い漢字が並んでいて「部首に父がつくのはどれか?」とか、「育児休暇を取った人は労働人口の何パーセント?」「剣玉の技の種類はどれくらいあるか?」はては「サザエさんの波平さんとマスオさんの会社の名前は?」なんて問題まであって、これを知らなければいいパパになれないのだろうかと思ってしまったのだった。
検定だから当たり前だけれど、検定で測れるのは知識量=情報量に過ぎない。世の中全体にいろんなことを知っていることがいいことのように思われていて、テレビもやたらとクイズ番組ばかりで、雑学に詳しいタレントや難しい漢字を知っている芸人や漫画家がもてはやされているが、これだって結局はその人がどれだけの情報を覚えているかでしかない。パソコンでいえばハードディスク(記憶装置)がどれだけの容量かってことだし、瞬時に引き出せるCPU(エンジン)がどれだけ速いかということだ。その道具を使ってどんなに創造的な仕事ができるかまではわからないのだ。本当は知識はあくまで人間の素養なのであって、ひけらかすものではないのかも知れない。
いいパパになるのに確かに少しは知識も必要だけれど、それ以上に目の前で泣いているこどもの気持ちを察するイマジネーションと感情移入がなければ、こどもを泣き止ますこともできないだろう。「ほ~らよしよし、泣くんじゃないよ、サザエさんのお父さんは山川商事、マスオさんは海山商事に勤めてるんだよ。知ってるかい?」ひょっとしたらこどもはキョトンとして泣き止んでくれるかもしれないけど…。
検定がブームのなるのは知識偏重の時代の気分と、それが商売になるからだろう。あまりにもいろいろな検定ができたので、今度はその検定を検定する団体までできるという。ならば今度はその検定を格付けする組織ができて、またまたそれを検定する団体が…ほんに人間の煩悩には際限がないことよのぉ!とても素養のある人の仕業とは思えぬことよ。
(2009/03月号)
蛇足
「検定ブーム」では、2006年ごろから全国に広まった「ご当地検定」や、それに触発された資格や検定とは異なる趣味や話題性で作られたユニークな検定が乱立したのでした。現在まで続いているものもありますが、2009年の135件から2013年には半分近くの77まで減少したとのこと、一過性のブームだったんですね。文頭の協会は漢字に関する検定の団体で、不正な資金の流用などが問題となったのでした。
最近でもクイズ番組は多いですが、知識だけではなくひらめきが重視されているように思うのは、その手の問題にはまったく手も足も口も出ない頭の固い爺ぃのひがみでしょうか。