こども時間、おとな時間

こどもって面白い

「あ~暇やなぁ! 何かおもろいことないかなぁ? あ~暇やぁ…」

今となっては大昔となった自分のこどもの頃を思いかえすと、いつもこんなため息をついていたような気がする。その頃はまだ「詰め込み教育」といわれていた時代で、当たり前のように土曜日にも授業があり「ゆとり」のゆの字もなかったのだけれど、それでもこどもたちは「暇やなぁ」を連発していたのだった。

 土曜日、授業が終わると家に帰ってお昼ごはんをかき込み、松竹新喜劇の藤山寛美の芝居に笑って泣いて人情を勉強し、吉本新喜劇のベタな笑いに関西人の素養を磨き、漫才にコミュニケーションの所作を学び、それから友だちと外で遊び倒して、帰ってくるのは日も暮れかけた頃、さすがにお次は宿題を片づける番、晩ごはんまでの短い時間にやっつける。そんな感じで土曜日の午後は過ぎていった。いまの基準で見れば、土曜日も学校があってたいへんとか疲れるだろうとか思うかも知れないが、当時は当たり前のことなのだった。

 最近の生物学的にいうと、成長期にあるこどもの身体の中では新陳代謝のスピードが速いので体内時計の針の動き方もとても速いのだという。するとこの「こども時間」と対比して世の中の時間は遅く感じるので、ドラえもんの「時間ナガナカ光線」のように10分が1時間になったように感じて「暇やなぁ」とため息をつくことになるのだ。これとは反対に体内時計がスローになった「おとな時間」のボクには、いちにちがめちゃくちゃ短く感じてしまい「あ~忙しい忙しい」とアリスの白うさぎのように走り回ることになるわけだ。

 つまりこどもはわれわれおとなとは違う時間に住んでいると思っておく方がよいのだ。そう思えば、世の中で確実に進行中の学校土曜日授業実施計画も、こどもにとっては案外たいした問題ではないのかも知れない。学校の授業がないいまでも、結果的にこどもたちは塾で勉強をしていたりするわけで、ひょっとすると塾よりも学校の方が習う内容が楽なのでラッキーと思う子がいるのかも知れない。休み時間には友だちとも遊べるし、こどもにとってはストレスなく過ごせるような気もする。とはいうものの、勉強時間が増えた分、遊びの時間も確保してもらいたいもの。昔からいうでしょ「よく学び、よく遊べ」と。

 ところでプレイスクールに来ているこどもたちもときおり「ヒマやし、遊んできていい」のたまってグランドや森に飛び出して行かれるのだが、遊び場であるプレイスクールでさらに遊びを求めていらっしゃるのは、こども時間のせいなのかそれとも単に飽きっぽいだけなのかについて生物学は何も答えてくれないのだった。

(2013/04月号)

蛇足
 体内時計の老化はすでに40代から始まるのだという。その原因のひとつは体内時計を司る時計細胞とそれに含まれ時計遺伝子が年ともに減ること、そしてもうひとつが睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンの分泌量の減少によって時計のリズムが狂うことだ。よく就寝前にパソコンやスマホなどの画面から出るブルーライトを見ないようにといわれるのは、このメラトニンに影響を及ぼすからだ。
 老化を遅らせるためにはサーチュイン遺伝子(抗老化遺伝子)を活性化するのがよいとのこと。そのためにポリフェノールの一種であるレスベラトロールを摂取するのがいいらしい。これはチョコレートや赤ワイン、イタドリに多く含まれているのだけれど、チョコの過剰摂取は腹回りに副作用を及ぼしそうだし、あの酸っぱいイタドリなどそうそう食べられるものでもない。ということは、必然的に赤ワインを飲まなければならないという結論に達するわけである。いやぁ~、もうしょうがないなぁ!

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