【おことわり】以下「昆虫食」について書いておりますので、生理的に受け付けない方、許容できない方はお読みにならない方がよろしいかと存じます。
♪虫食いねェ!
虫はショウリョウ キリギリス(ヘイ・ラッシャイ)
ウマオイ イナゴ ツチイナゴ(ヘイ・ラッシャイ)
カマキリ コオロギ アカトンボ(ヘイ・ラッシャイ)
オンブ クルマに トノサマバッタ(ヘイ・ラッシャイ)
ここの虫は日本一 虫食いねェ 虫食いねェ 虫食いねェ!
アゲロ カジレ バリバリバリ…
*シブがき隊「すし食いねェ」のメロディーで
今年も冒険クラブの子どもたちと「森の秋の味覚シリーズ」第一弾の「むしむし大作戦」を行った。この時期に「お~い、今日は虫捕りに行くぞ!」と声をかけると、子どもたちは目を輝かせて「それって食べるん?」と返してくる。毎年の恒例プログラムなので、子どもたちの頭の中には<秋>⇒<虫>⇒<食材>という刷込みが確立しており、森のあちこちで異様な集中力で虫探しをしてくれたのだった。
170℃ほどに熱せられた油の中に、子どもたちと捕ってきたばかりの虫たちを投入する。虫かごの中で飛び跳ねていた虫たちがその瞬間に時間が止まったかのように動きを止め、しばらくすると緑色だったバッタが赤色になっていく。これはエビやカニの甲羅にも含まれ糖尿病や高血圧に効果があるとされるアスタキサンチンが変化することによるものらしい。その成分と味は関係はないが、実際に食べてみるとエビやカニの風味がするのだ。
そんな味を知っている子どもが油の中の虫を見てつぶやく。「美味そう~っ!」虫の素揚げ見て美味そうって! 「おいおい、そんなこと他のところで言うなよ。かなりヤバいヤツやと思われるで」と忠告するとともにひとこと付け加える。「プレイスクールで虫食べされられたって言うなよ。無理には食べさせてへんから」当世、ここんとこはハッキリさせておかなければいけません。
「よ~し、虫あがったよ~!」のひと声に待ちわびていた子どもたちの手があげたての虫に伸びる。今日の味付けはシンプルに塩だけ、味変に黒コショウとガラムマサラも用意しておいた。毎年食べている子どもは頭からひと口、初めて挑戦する子どもはしばらく観察してから意を決して口に運ぶ… そして笑顔とともに「うまっ!」
このような「昆虫食」は、アジアやアフリカ、ラテンアメリカなどを中心に世界で約20億人もの人々が食事の一部としており、日本でも地域に根ざした食品として例えばハチノコやイナゴ、ザザ虫、カイコなどが食べられている。国連食料農業機関(FAO)でも「今後、昆虫食が食料・飼料になり得る」として昆虫を貴重な資源として重要視している。昆虫食が注目されているのは次のような理由による。
①地球環境にやさしい
昆虫と家畜から同量のタンパク質を生産するときに排出される温室効果ガス の量は桁違いに少なく、またエサの量は牛の1/5、生産期間も牛は30ヶ月に比べてコオロギは1週 間から1ヶ月と地球環境への負担が少ない
②栄養面で優れている
コオロギのタンパク質量は鶏肉や豚肉、牛肉と同程度含まれており、さらに 微量栄養素も多く含まれている
③生産、加工がしやすい
生産するための農地面積が他の食肉に比べて狭くてもよい。鶏の1/3、牛の1/10、さらに素揚げやペースト、乾燥粉末などの加工も容易にできる
などなどのメリットが認められていて、将来的には宇宙ステーションや火星移住計画などの食料資源としても研究されているという。子どもたちと虫を食べながら、ひょっとしたらキミたちが大人になったころには、牛肉なんて食べられずにコオロギがメジャーになっているかも知れないよなんてことを冗談めかして話していたのだが、人口増加と食事の西洋化などが進んだら冗談ではなくなってしまうかも知れない。今は無理して虫を食べる必要などないけれど、子どものころに面白がってでも食べることが出来たら食の世界はぐんと広がることだろう。「虫も食べられるんや」から「何でも食べてやろう」へ。きっと好奇心が子どもたちの世界を広げてくれるのだ。
さぁ次は何を食べようか? 京野菜で育った「昆虫煮干し・京都コオロギ」でひいた出汁に森のキノコとザリガニじんじょのお椀でほっこりなんていかがどすぅ? 食は森に在り!
(2021/10月号)
蛇足
しつこいようですが、興味のある子どもたちだけが食べているのであり、無理に食べさせているわけではありません。ただ虫だけに限らずスーパーでパックに入って売っているものだけが食べられるわけではなく、いろいろなものが食べられるのだということは子どもたちに伝えたいとは思います。
ちなみに京野菜で育った「京都コオロギ」にはペットのエサとしてメジャーに養殖されている小型のヨーロッパイエコオロギが使われています。