Born to be Wild~やんちゃでゴメンね!

こどもって面白い

 土曜日、発明クラブ活動中の工房の入口から大きな人影がふたつ、むぬぅっと入ってきた。すわ不審者かとそちらを見ると、「久しぶり!」とちょっと照れくさそうにあいさつする見覚えのある顔がふたつ、「おう! 久しぶりやん。元気にしてんの?」以下()内は心の声(うわぁっ! こいつらデカっ!めちゃおっさんみたいやがな。こんなやつに街で声かけられたら、ゼッタイ知らん顔して逃げるなぁ)「高校何年になったんやっけ?」「2年」「ふーん? ちゃんと学校行ってんのん?」と一応大人のようなことを聞いたりする。「聞いてぇなぁ、たばことバイクで学校ちょっとヤバいねん」「おいおい、せっかく高校入ったんやからあんまりやんちゃしたらアカンで」とこれまた大人のようなことを言ってみたりする(まぁそんな年頃やわなぁ、ちょっとくらいはええんちゃうの。こいつやったら無茶はしいひんと思うけど)

 高校生ともなるとこどものいたずらとは比べことにならないことをしでかしてくれるものだ。面白いからという理由だけではなく、きっと学校や社会、そして大人に対するノンという意思表示として確信犯的にしでかしてくれる。というか自分自身いろいろとしでかしていた。お酒にたばこ、バイク…いえいえ、なぁにかわいいもんですよ。通過儀礼のようなもんですから。その頃は世間さまも多めに見てくれていたもんです。

 でもこんな話を今の大学生にしたら「めちゃ不良!」と一刀両断、聞けばいまのみなさんはたいへん真面目にお育ちになっておられ、確かに禁煙教育は行き届いているし、自動販売機でたばこ買うにもコンビニでお酒買うにも年齢確認が必要だし、実に管理が行き届いている世の中なわけで、やんちゃもしにくい時代ともいえる。ちょっとくらいのやんちゃは通過儀礼として、早目に卒業しておくほうが大怪我しなくていいとも思うのだが、いまはそれもままならないようだ。

 「せっかく来たんやし、ちょっと手伝っていけや」「うん」「ほな、そこで木のペーパーナイフ作ってる子に教えたって」「へぇ~まだこんなん作ってるんや。オレもナイフやとか魚やとか、よう木で作ったわ。紙ヤスリすんのが嫌で嫌で、ももええかってきいても、フーチンすぐまだやっていうし、ホンマめんどくさかったわ。そやけどあの木の魚いまも家に飾ったるんや」「へぇ、まだあるんや」

 しばらくすると工房からふたりの姿が消えていた。戻ってきたふたりと話をしていると、こんなことを言い出すのだった。「こどもってこわいやろ。オレがへんなこというてそれに染まってしまったりしたらアカンしな」「へぇ~、そんなこと考えるようになったんや。お前も成長したなぁ」「でもな、オレな先生になろうと思てんねん」「先生か、そらええわ。お前みたいなんが先生になったらおもろい先生になるで。頑張りや!」

 と言いながら、ちょいやんちゃやったボクに高校の先生がかけてくれた言葉を思い出していた。「お前みたいなんが先生になったらおもろいねんけどな」 先生やないけど、子どもに関わることを生業にしている今のボクがいるのは、ひょっとするとこのひとことがあったからなのかも知れない。

( 2010/11月号)

蛇足
 1980年代に全国に吹き荒れた校内暴力は、時代とともに激減しました。もちろんさまざまな「指導」などの成果なのでしょうが、それ以外にも大きな要因のひとつに少子化があるに違いありません。2022年の総人口に占めるこども人口(15歳未満)の割合は11.7%、つまりこどもひとりの周りに大人が8人くらいいることになります。そんな中じゃやんちゃもしにくいですよね。ちなみに1950年のこども人口はなんと35.4%!、3人にひとりがこどもだったことになります。日本も若い国だったんですね。大人の目が届かない若気の至りの社会はきっとダイナミックだったに違いありません。そしてそのパワーが戦後の高度成長期を支えたのです。はてさて、この先のこの国はどうなる?どうする?

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