カートに乗ったサンタクロース

キンダー

 プレイスクールの近くに何かとマスコミで取り上げられる巨大倉庫型スーパーコストコ(COSTCO)があり、他府県の人もやってくるほどにぎわっている。どんなものなのかと足を踏み入れてみて、ここがにぎわっている理由がよくわかった。ここはまさにアメリカそのものなのである。ひとつのパックが巨大で、そんな商品が天井まで積み上げられているさまは、大量生産・大量消費の殿堂、まさにアメリカ的資本主義そのものなのだ。手持ちの買い物かごなどなく、日本のスーパーの2倍はあろう大きなショッピングカートを押して通路を歩いていると、何かひとつ商品をカートに入れた瞬間に、我慢や節度や身の丈などが崩壊し、欲望のスイッチがONになってしまうような気がする。さらにはすれ違う方々のカートには商品が山盛りに積まれており、ここはこういうところなのだ、お前もこっちにおいでと欲望の沼に誘う魔の声が頭の中のこだまする。物欲、食欲、消費欲…げに人とはおろかな存在よとわが身の弱さを痛感しながら、5リットルの箱ワインをひかえめにカートに入れてしまったりするのであった。

 いまの時期であるからして、この倉庫にもクリスマスプレゼントのコーナーがあり、何だかスゴイおもちゃが並んでいたりした。そういえば先日、お母さんたちと話をしていたら、いままでは「サンタさんに何をお願いしたの?」と聞けば素直に教えてくれていた子どもが、「サンタさんにはお願いしたけど、お母さんにはいわへんねん。もしお願いしたものと違うものが来たら、サンタはお母さんということになるやんなぁ」とついに禁断のサンタの存在証明に乗りだしたというのだ。それを聞いていたほかのお母さんは「うちの子どもには、サンタさんはあなたがお願いしたものを持って来てくれるんじゃなくて、あなたに必要なものを届けてくれるのよ、ということにしてある」と見事な解決策を提示してくれた。なるほど、サンタさんは欲望を満たすためにいるのではなく、子どもの人生の道しるべのためにいるのだ。単に子どもがほしいものを与えるのであれば、サンタさんはソリではなくコストコのショッピングカートとともに現れるだろう。どうです、今度からこの作戦で悩み多きこの時季を乗り切ってみてはいかがでしょう。

 ところで、2012年今年の漢字は「金」なのだという。ロンドンオリンピックの金メダルやノーベル生理学賞などがその理由なのだそうだが、何かの賞をいただくこともなく、つつましやかに暮らしていた一般庶民にはにわかに同意しがたいものがあるし、現政権の閣僚は「一番じゃなきゃダメですか。二番じゃダメですか」とのたまっておられたではないかなどという思いはぐっと飲み込むことにしましょう。それにしてもこの文字がボクには「キン」ではなく「カネ」としか読めないのは、心の底まで欲望にからめとられているからなのだろうか?…とりあえず宝くじ売り場に大きな夢を買いに行くか!

(2013/01月号)

蛇足
 10月のハロウィンが終わるや、翌日にはクリスマス商戦がスタート、それが終わるとお正月とお祭り騒ぎの日々が続きます。すべてのイベントはその本来の精神性などお構いなしに経済を回すために利用され、これでいいのかと自問しつつまんまとそれに乗せられる…楽しければそれでいいの?

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