きのこが教えてくれること

こどもって面白い

 朝夕は少し肌寒いほどになり、やっと秋の訪れを感じるようになってきた。ここのところ「秋の味覚シリーズ」と銘打って、食べものネタの活動ばかりが続いている冒険クラブ、「虫」「ザリガニ」ときて最後は「きのこ」というわけでこの日の活動は「きのこ探検隊」という設定なのだ。まずはきのこについてのお勉強、とはいってもしょせんはプレイスクールのこと、「きのこクイズ」でちょっとだけ真面目にでもほとんどお笑いで始まりはじまり。

 「きのこは何の仲間でしょう?」 ①花と同じ植物 ②カビと同じ菌類 ③きのこだから子どもの仲間…「正解は②のカビの仲間」と聞いて眉をひそめる子どももいる。実は子どもの中にはきのこ嫌いが結構おられ、カビの仲間なんて聞いたらもう二度と食べたくなくなっちゃうのかも知れないので、「人間は昔から菌とは上手に付き合って来ていてみんなが食べてるおしょうゆや納豆やパンとか、パパが大好きなビールとかお酒なんかも菌の力で作られいているんだよ」とフォローも忘れてはいけない。すると「あっ知ってる。カマンベールとかブルーチーズとかもや」と将来の酒豪を予感させる合いの手を入れてくれる子どももいたりする。きのこは菌類なので、本当の姿は地面の中にある「糸状菌」ということになる。そこで次の問題。

 「きのこの本当の姿は土の中にあるとしたら、みんなが目にするきのこっていったいなんだ?」 ①いやぁ~たまたまできちゃったんだよななぁ… ②お花のようなもの ③まぼろし~っ! もちろん③のときには立てた右手人差し指を左右に22.5度振りながら言わなければならない。正解は①、気温や湿度などの条件がととのった時にだけ「子実体(きのこの正式な名前)」が地上に現れ、胞子を飛ばして広く増殖することが出来る。でも土の中の糸状菌だけでもどんどん広がっていくので、ある意味きのこは無くてもまっいいかっていう存在、ベーシックインカムは確保されていた上でのボーナスみたないものか。

 ところで世界最大の生き物は何かと聞かれたらどう答えるだろうか? 密林の奥にひっそり暮らしている巨大生物、はたまた真っ暗な深海に生息する海洋生物…これが意外と答えは「菌類」なのだという。1998年にアメリカ・オレゴン州で発見されたキシメジ科のキノコは、土の中に広がった菌床の広さが8.9平方キロメートルといってもわからないけど、、東京ドーム684個分、関西国際空港の敷地面積が約10.58平方キロメートルなのでそのほとんどが覆われる広さなのだ。遺伝子を調べたところひとつの生物だと確認されたのだいう。しかも重さは推定で600トン以上、推定年齢は2400歳(重量・年齢は諸説あり)とシロナガスクジラなんて目じゃない規模の生き物なのだ。この広大な面積にオニナラタケという食用にもなるきのこ出るらしいのだが、ナラの木の根元から生えて木を枯らしてしまうので、きのこ食べ放題と喜んでばかりはいられないのだとか。普段は見えない地面の中にとてつもなく大きくて、気の遠くなるほど長生きの生命体がいるなんて、何だか森を見る目が変わってしまいそうだ。それに比べて人間の何とちっぽけなことか。きのこはそんな未知なる世界の存在をわれわれに伝えるためのメッセンジャーとして姿を現しているのかも知れない。

 ちなみにボクのきのこ好きの原因が、秋にきのこ狩りを楽しむ信州でしばらく暮らしていたからなのか、それとも『宇宙戦艦ヤマト』で有名な松本零士がその昔描いた『男おいどん』に登場するサルマタケ(*)の影響なのかは今もって定かではない。

*  四畳半の下宿に住む貧乏学生の主人公のマンガ。洗濯もせず押し入れにため込んだサルマタ(パンツ)から生えたキノコをサルマタケと命名し、空腹のあまり食用に…詳しくはおじいちゃんに聞いて下さい

(2021/11月号)

蛇足 今年は今頃になって夏日になったりして、いったい秋はいずこへといった感じですが、その昔しばらく暮らしていた信州ではきのこ狩りが秋の楽しみのひとつでした。栽培されたものに比べると香りも味も強いきのこを使った野趣あふれるきのこ汁は美味しかったです。しかし図鑑を見ても食べられるきのこや毒きのこ以外に△マークのよくわからないものも多く、食用かどうかは経験的な知識だということがわかります。ということは、どれほど多くの先人達が腹痛に身をよじっていたり、ときには命を落としたり人もいたことでしょうね。スーパーにならんでいる食材は安全だけれど、野の食材を食べなくなるということは先人たちの智慧を失うということなのかも知れません。
あぁそれにしても、今年も松茸は口に入らなかったなぁ!…山に探しに行こうかな。

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