心の叫び

こどもって面白い

「せんせい~っ、100点とらせろぉぉぉぉ~っ!」
「おおっ、これはすごい!103デシベル!」

 今日はプレイスクールのおまつり「ガキんちょ横町」が開かれていて、そのイベントのひとつとして大声コンテストをしているのだ。騒音測定器をレンタルして計測するという本格的なものだ。ただ叫ぶだけだと面白くないので、今回は「○○さんへのお願い」を大きな声で叫ぶというお題にしてみたところ、なかなかユニークお願いが続出したのだった。小学生の子どもたちは「テストで100点とらせて」「宿題出すな」など自分の努力はさておいて、先生へのお願いというか嘆願というか、言いがかりのようなものがやたらと多かったような気がするが、それだけ子どもにとってはテストや宿題というものが切実な問題として彼らの日々の生活に影響しているいうことなのかも知れない。

 そのほかには「神様、早く大きくしてぇぇぇっ~っ!」「かけっこを速くして!」などのほか「神様、食物アレルギーなおしてくれ~っ!」というとても切実な願いもあったりしたのだった。そして今回の子どもの部の優勝は「お父さん、もっと遊んでぇぇぇっ!」なのだった。お父さん、今のうちにちゃんと遊んでおかないと子どもの成長は案外早いから、こんなサラリーマン川柳(第一生命主催)のようになっちゃいますよ。

 子が描いた パパの似顔絵 家族遺産(サラリーマン川柳)

 子どもの部に引き続きお父さんの部もしてみた。なかなか参加してくれないお父様方をリーダーたちがおやじ狩りのように拉致して無理やりステージに登らせるという力技の末、数名のお父様方が魂の叫びを爆発させてくれたのだった。子どもたちの叫びに応えるかのように「子どもたち、宿題ちゃんとしろ~っ!」というものや、日々の生活でさぞご苦労されているのでしょう「ちゃんとごはん食べろ~っ!」というものもあった。もちろん家庭を一歩出ると会社という戦場で戦っておられるお父様方、「社長~っ、早く帰らせろ~っ!」と毎日夜遅くまでのご苦労がしのばれるものや、「部下たちよ、文句ばっかりいうなぁ~っ!」と管理職としてつらい日々を過ごさねばならない叫びもあったりしました。これにはこんな川柳でお応えましょう。

    オレの部下 半沢みたいな 奴ばかり(サラリーマン川柳)

 そしてついに出ました! 一番身近におられるがゆえに、そのひと言が一番言いにくいあの方へのお父さんの心の叫び。「お母さん、もっと優しくしてぇぇぇぇっ!」…うっ、かわいそ過ぎる…。そうかと思うと公衆の面前でこんな言葉をさらっと言ってのけてしまうカッコよすぎるパパも、「お母さん、今でも愛してるよ~っ!」きゃ~っ、聞いている方が赤面しそう…しかし公衆の面前でなくても言えそうもないボクには、ひょっとしてこの言葉の裏には今晩のおかずをもう一品増やしてほしいという思惑があるのではないかと勘繰ってしまったのだった。

 この一言で大人の部の大声コンテストが優勝したらさぞや美しい終わり方だったのだろうけど、優勝をかっさらっていったのはこんなひと言でありました。「ちゃんと掃除しろぉぉぉぉっ!」その場にお母さんがいないからこそ言えるひと言、絶対に面と向かってはいえないこのお言葉、「よく言ってくれた、その通り」と司会をしていたボクも思わず握手を求めそうになってしまったのだった。でも、この言葉に膝を打つお父様方、世の中のご同輩はみんな苦労しているようであります。

    誰やるの 炊事洗濯 僕でしょう(サラリーマン川柳)

 こうしてめでたく大声コンテストは終了、ステージを降りたボクにあるお母さんが「母の部はないの?」とおっしゃられたのでありますが、これ以上続けると家族へのクレーム合戦になってしまい、大声のボルテージは上がっても家庭の平和があやぶまれ、ましてやこのご時勢、父側母側子ども側が結束して集団的自衛権などうんぬんした日にゃあぶなくて仕方ありません。というわけで、あとは外交的努力と人間的な交流で事態の解決をはかられますることを心から願うばかりでなのでありました。

(2014/06月号)

蛇足
 毎年行われている「サラリーマン川柳」はそれぞれの時代を反映した名作(迷作)の数々が発表されていて思わず笑ってしまいます。2022年の作品でもお父さんの悲哀が感じられる作品がありました。
 熱が出て はじめて個室 もらう父
 あれやって」いわれてやると「なぜやった」
 妻と子の 旅行支援し 俺ひとり
 この年(2014年)集団的自衛権が行使できるよう憲法解釈の変更が閣議で決定されました。そして今年(2023年)には、敵基地攻撃能力を反撃力として認めることも閣議決定されています。何だか大事なことなのにお身内だけで決めちゃっていいんですかねぇ…

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